まいの雑記帳

知性

投稿した日
2026/07/14
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嫌な時代になったもので、わたしが知性を感じていたもの達は、軒並みLLMによって6割くらいの完成度で再現可能になってしまいました。

文章も、コードも、設計も、映像も。おかげさまで世の中はslopまみれです。検索結果を開けばLLM製のまとめ記事、技術記事サイトを開けばどこかで見たような解説の劣化版焼き直し。SEO汚染で瀕死だったインターネットに、とどめの一撃が入った格好です。

この6割という数字が、また嫌らしい。2割なら誰も相手にしませんし、10割なら諦めもつく。6割は、素人目には十分に見えて、よく見ると粗が見える感じの、ちょうど厄介なラインです。そして残念なことに、世の中の大半の場面は6割で十分だったようです。残念で仕方がありません。

極端な話、LLMの出力する任意の成果物は単なるパターンマッチに過ぎません。確率的に尤もらしいトークンを並べているだけで、そこに理解と呼べるものがあるのかは怪しいところです。

ただ、残念なことに、わたし達が知的作業と呼んでいたモノの多くは、そこまで崇高なものではなく、パターンマッチで代替可能でした。とりあえず動くものをつくる、目の前のエラーに場当たり的なパッチを当てる。そういうある種の短絡的な思考で解決できる問題は殆どLLMで解決可能になっているように感じています。認めたくないですがね。

正直、コーディングや設計で現行のLLMに負ける気は更々ありません。が、これも今だけでしょう。そのうち負ける気がしています。というか、Fable 5相手ですら怪しいですからね。1年前のモデルには余裕を感じていたというのに。

本当に負けた日には、わたしも「オデ、Fableノウデ、クウ。オデ、ツヨイエンジニアニ、ナル」とか言い出しかねません。まぁ、相手に腕は無いんですが。

以前、LLMがどれだけ優れていても、つまらない人間はつまらないという記事を書きました。今回は、その矛先を自分に向けてみようと思います。

私は幼い頃から気持ちの悪いコンピュータのオタクでした。それ自体はただただ気持ち悪いだけなのでいいのですが、いつの日からか、技術は好奇心の対象というより、無価値な自分を価値あるものに見せるための粉飾の材料になっていたようにも思います。技術の話をしている間だけは、何者かでいられるためです。

念のため書いておくと、これは私が特別高度な事を理解していることを示唆するものではありません。

とは言え、世の中の大半は(詳しいとされている人でさえ)基礎的な部分を碌に理解していません。TCPの輻輳制御を説明できないままインフラを語り、ベジェの制御点の意味も知らないままモーションを売っています。だから、尤もらしいことを言うだけで相対的に浮上できてしまう。ただそれは、周囲の無理解に支えられた非本質的な虚構でしかないとも思うのです。

白状すると、私は自分を大きく見せようとする無知な人が苦手です。それは私自身がそういう側面を持ち合わせているからなのかもしれませんし、そうではないのかもしれません。実際のところ、周りが私のことをどう思っているかなんて知りようがないので、どちらとも言えないのですが。

そして今、尤もらしいことを言う能力なら人間よりよほど上手い計算機が現れてしまいました。虚構で嵩上げしていた部分から順に価値が剥がれ落ちていきます。これは困ったことになりました。

では、何が残るのでしょうか。

私は、分からないことを分からないと自分で認識して、批判的に内省できることだと考えています。視座が高い話をしたいわけではありません。むしろ逆で、それすら出来ないメタ認知で、現代社会に適応できるのか?という純粋な疑問です。

LLMは自分が何を分かっていないのかを分かっていません。知識の穴に差し掛かっても速度を落とさず、同じ自信で虚偽を出力してくる。あれだけ流暢に喋る計算機が、自分の限界の認識だけは絶望的に下手なわけです。裏を返せば、自分の理解の輪郭を把握していること, どこまでが検証済みでどこからが受け売りかを区別できること, 分からないと言えること。今のところ、ここあたりだけは辛うじて人間の役割として残っています。

むしろ、それを持たない人間には価値がないので、LLMでいいです。分かっていないことを分かっていないまま断言する人間は、品質でも再現性でもコストでもその辺の計算機に劣ります。存在意義がありません。

偉そうなことを書きましたが、真っ先に価値が剥がれる側は多分わたしです。コーディングで負ける日が来たとき、身の程を知る知性とやらが飯の種になる保証はどこにもありません。

とはいえ、他にやれることも特に思いつかないので、当面は自分がどこから分かっていないのかの確認だけ続けることになりそうです。それすら粉飾の一部だと言われたら、返す言葉もありませんが。