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自宅サーバーやめた

自宅サーバーやめた

投稿した日
2025/04/30
読了まで
4.63分で読み終われます (2,776文字)

わたしが長年続けてきたことについて、一つの区切りがついたので、その経緯と考えを少し整理してみようと思います。
小学生の頃に初めて構築したPMMPのサーバーから数えて、十年ちょっと続けてきた自宅サーバーの運用をやめる決断をしました。

自宅サーバーという存在

そもそも、自宅サーバーがどのようなものか、という点に触れておく必要があるでしょう。
その名の通り、自宅に設置して運用するサーバーのことです。
一般的にサーバーは、コンシューマ向けの製品と比較して耐久性などが考慮されており、24時間連続で稼働させることを想定して設計されています。

わたしの場合、FUJITSU PRIMERGY RX2530 M4というサーバーを自宅に4台、そして別荘にもそれぞれ3台ずつ設置していました。
それらの拠点をNGN網内VPNで接続し、一つのネットワークとして機能させていたのです。
その上では、現在も公開しているMisskeyサーバー🔗や、パスワード管理のためのvaultwarden、ファイル同期用のnextcloud、あるいはDNS用のbindなど、公開サービスから個人的な利用用途のものまで、多岐にわたるソフトウェアをホストしていました。
一時期はHomeNOCと接続し、おうちのルータがフルルートを食っているという少し特殊な環境を構築していたこともありました。

やめた理由

自宅サーバーを始めたきっかけは、当時運営していた公開Minecraftサーバーのためでした。
ごく単純な動機だったように思います。
その後も、形を変えながら様々なものを動かし続けてきましたが、その背景には、自分の手で環境を所有しているという感覚があったのかもしれません。

しかし、エンタープライズ向けとされる機器を用いたとしても、結局のところ設置場所は所詮自宅でしかありません。
データセンターのような専門施設とは異なり、信頼性や稼働の安定性という点では、自ずと限界が見えてきます。

それに加えて、「自宅サーバーはコストパフォーマンスが良い」という当初抱いていたイメージは、運用を続けるうちに少しずつ変化していきました。
維持管理にかかるコストを考慮に入れると、一概にそうとは断言できないと考えるようになったからです。
冗長化、万が一に備えたオフサイトバックアップ、故障時のための保守用パーツの常備、定期的なメンテナンス作業。これらには相応の手間と費用がかかります。
加えて、電気代もそれなりの金額🔗がかかりますし、何よりも「もしサービスがダウンしたらどうしよう」という心配が、常に頭の片隅にありました。

自宅サーバーでは当然、サーバーマシンが故障した際の対応も自分で行わなければなりません。
特に起こりやすい問題は、データが失われることでしょう。
コンシューマ向けのものより高耐久とはいえ、ストレージは消耗品であり、突然壊れてしまうこともあります。
S.M.A.R.T.情報である程度の状態は把握できますが、それでも故障を完璧に予見することは困難で、常に故障のリスクを念頭に置く必要がありました。

ストレージの故障に備えるというのは、ただバックアップを作成するだけでは足りません。
手順を明確にしておき、実際に故障が発生した際には、迅速に復旧に取り掛かれる準備をしておくことが求められます。
これを怠ると、サービスが使えない時間が延びるだけでなく、最悪の場合、復旧を試みて初めてバックアップが役に立たないことに気づく、という苦い経験をすることにもなりかねません(1敗)。

できる限りサービスを継続させ、データを失わないようにするために、RAID構成を採用したり、冗長構成を用意したりしていましたが、絶えずサーバーの調子を気にし続けることは、精神的な負担が大きかったです。
所謂OSI参照モデルにおけるL1からL7まで、その全ての面倒を見る必要があり、完璧を目指そうとした結果、少々消耗してしまったのかもしれません。

得られたもの

それでも、自宅サーバーを運用してきたことは、わたしにとって無駄ではなかったと考えています。
自宅に運用基盤を構築し、サーバーを管理するプロセスを通じて、多くの知識や技術を習得できたからです。

広く利用されている主要なパブリッククラウドでは、低いレイヤの詳細を知らなくても利用できる場合が多いですが、逆に言えば、そうした知識を実践的に学ぶ機会が得にくいということでもあります。
自宅でのサーバー運用を通じて、このような知識を実際に手を動かしながら身につけられたという点において、これまでの時間は有意義だったと、そう思えるのです。

自宅サーバーをやめてどうすんの

現在は、ローカルネットワークで稼働させる必要のあるbindを除き、他のサービスはほぼ全てクラウド上に移行し、自宅以外の場所に設置していたサーバーは全て停止させました。
Misskeyや定期実行しているバッチ処理などは、GKEやCloud Run、あるいはCloudflare Workersといったサービスへ移行しました。
Nextcloudのようなソフトウェアについては、自身でホストする形態をやめ、それらの機能を提供するSaaSを利用することにしました。

近年、手軽に使えるクラウドサービスが普及したことで選択肢も増え、自宅サーバーという選択肢は、以前ほどは魅力的な選択肢とは見なされなくなってきているかもしれません。
しかし、私としては、自宅サーバーは一度試してみる価値のあるものだと今でも思います。
大規模なものでなくても、小さくても何かサービスを自分で動かしてみる経験は、知識を深める上で非常に良い経験になるはずです。

思い返してみれば、わたしが自宅サーバーをやり続けていた理由の一つに、「所有感」があったように思います。
普段作業する場所のすぐ近くに実体のあるサーバーが存在し、そこで動いているアプリケーションへ絶えずトラヒックが飛んできているという実感です。
事業者が提供するパブリッククラウドを利用することは、どこか自分の作ったものやデータが、手の届かない場所に行ってしまうようで、少し寂しさや不安を感じていました。

しかし、運用に伴う負担や困難を経験する中で、考え方が徐々に変わってきました。
むしろ、物理的な制約がなく、安定稼働し、規模の変更も容易で、従量課金の柔軟性に、大きな利点を感じるようになったのです。

これは余談ですが、可能な限りセルフホストしたいという気持ちと、利便性を追求して全てをSaaSに委ね、先進的なサービスを享受したいという気持ちが、交互にやってくる感覚は、わたしだけのものでしょうか。
この辺りの感覚について、皆さんはどうお考えになるか、少し気になるところです。

長くなりましたが、今回はこの辺で。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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